未来を開く鍵、ニューロダイバ−シティ
伊藤穰一× KMD「みんなの脳世界」展
2023年9月、東京の竹芝で、近い未来のテクノロジーを体験する大規模イベント「ちょっと先のおもしろい未来」が開催され、約3万人が来場しました。3回目の開催となる同イベントにおいて大きな盛り上がりを見せた展示のひとつが、参加体験型の「みんなの脳世界〜ニューロダイバーシティ展2023〜」です。この「みんなの脳世界」展は、石戸奈々子教授による「ニューロダイバーシティプロジェクト」の第1弾として企画されたもの。すべての人は神経や脳の違いによる多様性があるとする「ニューロダイバーシティ」という考え方のもと、展示をとおして、誰もが力を発揮できる社会創造を目指すための取り組みです。
千葉工業大学学長の伊藤穰一さんも、本展における中心メンバーのひとり。これまで主にアメリカで、ニューロダイバーシティの普及や社会への理解促進に向けて大きな力を発揮してきました。「ほんの少し前まで発達障害は治療すべき障害であり、訓練によって『健常者』に近づけようとされていました。これからは、誰もがありのままで幸せに暮らせる社会を目指さないといけない。広義には認知症なども含むニューロダイバーシティとは、もれなくすべての人に関係のあることなんです」と話します。
本展では、産官学のさまざまな組織や研究者が参加してブースを出展。多様な社会の実現に向けて具体的なテクノロジーのソリューションを公開しました。その中軸となったのは、個人の力の拡張と環境の再設計です。身体の能力面で苦しんでいる当事者向けには、能力の補完や拡張が可能な最新テクノロジーを展示。一方で、わたしたちを取り巻く環境の再設計については、視覚障害者には信号の緑と赤の区別がつきにくいことを例に挙げつつ、「もしも信号が緑と赤じゃなかったら?」と疑問を投げかけます。石戸教授は、「それぞれの人が自分らしく力を発揮できるようにするために、環境側の調整で解決できることはとても多い。これまでの当たり前を見直すことが重要で、『多様性こそイノベーションの源泉である』と私は考えています」と話します。
本展の成果として、一般来場者が最先端の研究に触れる機会を提供できたことはもちろんのこと、各ブースの出展者である研究者同士の横断的な交流によって新たな化学反応への期待感が高まったと語る石戸教授。大きな手応えを感じたことで、来年はさらに規模と領域を拡大して実施したいと意気込みます。「すべての人が社会創造の主体的参画者だと知ってもらうことがスタート地点。本展は、未来への具体的なアクションを促すための社会運動なんです」。
(本記事は2024年3月に作成されました。)

