研究開発から生まれる新たなビジネス
Telexistence株式会社 ☓ KMD「テレイグジスタンス産業の創出」
2017年、KMDから未来を担うベンチャー企業が産声をあげました。テレイグジスタンス(遠隔存在)の研究に基づいたロボティクス開発の企業、Telexistence株式会社(TX inc)です。KMDで2013年に博士号を取得したチャリス フェルナンド特任講師がファウンダー兼CTO(最高技術責任者)として事業を推し進めています。テレイグジスタンスとは、人間が今いる場所とは異なる場所で自在に行動できるという概念およびそれを実現する技術体系のこと。バーチャルリアリティ(VR)の技術を活用し、いわば「自分のアバター(分身)」をつくり出す研究です。例えば、遠い場所に暮らす高齢者が孫を抱きしめたり、ロケットに乗らずに宇宙旅行できる未来を想像してみてください。IoTやAIに次ぐ次世代テクノロジーの大きなトピックとして注目され、輸送、物流、通信などさまざまな分野の大企業が投資するなど、本格的な社会実装に向けて動きはじめているのです。
このテレイグジスタンスを1980年に発表した舘 暲教授がKMDの特任教授に就いたのは2009年。40年にも及ぶ研究成果を最新のテレイグジスタンスロボット「テレサV」としてまとめ上げ、災害や介護の現場で実証実験に取り組むなか、世間では突如としてVR・AR(拡張現実)ブームが巻き起こりました。「次は間違いなくテレイグジスタンスの時代がくる」。そう確信した舘教授、南澤准教授とフェルナンド特任講師は起業を模索します。そこへさらに追い風が吹き、米国・XPRIZE財団が主宰する次期国際賞金レースとして、アバターを使ったレースが行われることになったのです。数年後には、これを目指して世界中からあまたのスタートアップが集い、テレイグジスタンスのビジネス基盤も整備されていくことになります。いちはやく会社組織となったTX incはその“本家本元”として、長年の研究実績を武器に社会的インパクトを与える存在となるはずです。
フェルナンド特任講師によれば、現在、TX incでは商用テレイグジスタンスロボットおよび操作コックピット、そして人間の行動データを活用するためのクラウドインフラの開発を急ピッチで進めています。工場の自動化、物流、小売、旅行、航空などの宇宙会社などの関心のある企業と話し合いを進めながら、身体障害者や高齢者用「瞬間移動」、ゲームやエンターテインメントや遠隔作業などをコンセプトとした事業に注力し、早ければ2019年の製品発表を見込んでいます。「今後はTX incがスタートアップとして事業化を進めていきますが、より先の未来に向けて、KMDでも連携しながら研究を進めていけるといいですね。例えば僻地診療や身体拡張分野などでの導入など、シード(技術や製品のコンセプト)の手前にあるプレシード段階の研究にKMDが取り組み、そこで実ったものを受けてTX incが事業化を目指す、というシームレスな流れが生まれると理想的だと思います」(南澤准教授)。KMDが得意とする「技術やビジネスなど複数の視点でものを見て、つくる」というDNAがTX incにも受け継がれているからこそ可能な連携といえるでしょう。
テレイグジスタンスロボットTelesar V。この技術がTX incに移転され製品化に向けた開発が進められている。

(本記事は2018年3月に作成されました)