シナスタジア・スーツ

VRとハプティックデザインの融合

水口哲也特任教授×ライゾマティクス×KMD「シナスタジア・スーツ」

「EmbodiedMediaProject」の一環として南澤孝太准教授のチームが進める、ハプティック(触覚)の研究に取り組んだ「シナスタジア・スーツ」は、VR(ヴァーチャル・リアリティー)作品「Rezinfinite(レズ・インフィニット)」の体験を拡張する“共感覚スーツ”です。「RezInfinite」のクリエイターでもある水口哲也特任教授が、KMDでハプティクス(触感技術)を研究する南澤准教授のチームと、メディアアートのクリエイティブ集団であるライゾマティクスに共感覚性を高めるスーツの制作を呼びかけ、本プロジェクトがスタートしました。

VRやARなどの技術開発によって視覚や聴覚の解像度が上がり、リアルな3D表現が当たり前になれば、触覚はさらに重要な要素となるはずです。そこで「シナスタジア・スーツ」では、内部に26個の振動子を配置して、例えば、音楽とシンクロして身体に「ドン・ツ」とベースドラムとハイハットがリズムを刻んだり、並べた振動子を時間差で震わせることによって何かが腕や身体を駆け抜けていくような感覚を与えるという仕組みをつくり出しました。さらに、スーツの外側に取り付けたLEDが振動に連動して点灯し、VRの世界観が体験者だけでなく周囲の人々とも共有できるものへと発展していきました。

VR作品のBGMやサウンドエフェクトが振動となって全身に伝わると、音楽を耳から聞くだけでなく、全身の触覚として感じる全く新しい体験になります。単純なバイブレーションとは一線を画す微妙な振動は、数多くの試行錯誤から生まれた表現です。このようなハプティックデザインは、世界初の試みといえるでしょう。

シナスタジア・スーツが初披露されたのは2015年12月、サンフランシスコで開催された「PlaySta-tionExperience2015」のステージ。メンバーの全員が現地に赴き、スーツを着用した水口特任教授がステージでRezInfiniteをプレイしながらプレゼンテーションを行いました。国内では、2016年2月から3月に六本木ヒルズで催された「MediaAmbitionTokyo2016」にて一般公開された後、「TokyoGameShow2016」や「SIGGRAPH2016」など、さまざまなイベントに出展し、2017年1月には「サンダンス映画祭」へも招待されています。多くの人々に体験してもらうとともに、シナスタジア・スーツはさらなる進化を続けています。

「このプロジェクトによって、ハプティックをデザインするという新しい領域が本格的に立ち上がりました。少し先の未来では、シ ナスタジア・スーツで体感できるような共感覚が、当たり前になるかもしれません。そのための新しい領域を開拓し、自らが最初のクリエイターになれることこそ、KMDが目指すメディアイノベーターの理想形の1つです」(南澤孝太准教授)

(本記事は2017年3月に作成されました。)

着用者本人が感じる振動は、スーツの外側に埋め込まれているLEDの色や光と連動して、周囲の人々にVR体験を拡張する。振動によって点灯するLEDの色、グラデーション、フェードのあり方を変えるなど、表現を模索した。

2016年2月に東京・六本木ヒルズで開催されたMediaAmbitionTokyo(MAT)に、「RezInfinite‒SynesthesiaSuit」はメディアアート作品として出展。1人のVR体験は、映像、光、色、振動、3D音響を伴って、空間全体に拡張される。人々が座る椅子の中にも、振動子とLEDが内蔵されている。

ライゾマティクス 佐藤文彦氏(左)と KMD 修士課程 小西由香理さん