インタラクティブ・ミュージアム

文化財を体感する新たな鑑賞体験

凸版印刷×KMD「インタラクティブ・ミュージアム」

KMD南澤孝太准教授のチームが凸版印刷と取り組んだリアルプロジェクトのテーマは「博物館における新しい鑑賞体験の創出」。凸版印刷が博物館など文化施設で展開しているVR(バーチャルリアリティ)シアターを題材に、観客がより能動的に参加できる場を「身体性を伴うインタラクションデザイン」によって実現することを目標にしました。

約2年間の研究成果の1つは、2014年夏、東京国立博物館と凸版印刷が共同企画し、TNM&TOPPANミュージアムシアターで上演されたVR作品『伊能忠敬の日本図』と連動する小学生・中学生向けイベントとして公開されました。

本プロジェクトの担当者であり、凸版印刷でVR研究に携わる同社総合研究所の吉野弘一氏は、「来館者にとっての新しい鑑賞体験を見つけ出せたことが最大の成果。プロジェクトの最初から課題を共有し、ユーザー調査に基づくシステム構築を進められる環境がリアルプロジェクトの魅力だと実感しました」と振り返っています。

共同開発したインタラクティブ映像作品は、懐中電灯型のコントローラーをかざすことで重要文化財「日本沿海輿地図(伊能中図)」に現在の地図が重なって表示されたり、虫眼鏡のように拡大して細部まで見るといった体験ができるもの。ミュージアムシアター前に設置された大型のスクリーンを多人数で共有しながら、鑑賞者個々の興味が向いた地図上の場所をたどることができるこの作品を通じて、伊能中図を自由な視点で体感的に鑑賞し、その後のミュージアムシアターでのVR鑑賞や展示室での実物鑑賞の理解を深める効果にもつながったと高く評価されました。

また、同時期に東京国立博物館の中庭で開催された、参加者が当時の方法で測量した結果から日本地図を簡易的に作成するという歩測ワークショップでは、映像作品の鑑賞との相乗効果によって、実感に基づく鑑賞体験を与えるという成果がみられました。

「博物館というリアルなフィールドだからこそ、プロジェクトの初期段階からアイデアをプロトタイピングしつつ検討できたことが成功の秘訣だと思います。共同研究を進めるなかでフィールドにあてたアイデアをテクニカルに具現化するのがKMDのリアルプロジェクトの特徴です。今回のように美術や歴史の魅力を新しいかたちで引き出し、子供たちのクリエイティビティの刺激となる映像コンテンツ体験は、今後さらに幅広く応用できると考えています」(南澤准教授)。

(本記事は2015年3月に作成されました。)

TNM&TOPPANミュージアムシアターで公開されたプログラム。映像展示「不思議なライトで伊能図を見てみよう!」、そして中庭を使って歩測を体験するワークショップ「めざせ伊能忠敬!トーハクをはかろう!」の2つ。
画像素材:重要文化財「日本沿海輿地図(伊能中図)」伊能忠敬作江戸時代・19世紀(東京国立博物館所蔵)

凸版印刷総合研究所 吉野弘一氏